2011年3月11日14時46分、
かつてない甚大な被害をもたらした東日本大震災。
仙台在住の伊集院静は震災直後から、
この未曾有の大災害に対して積極的に発言や執筆活動を行なってきた。
被災した人も、被災しなかった人も含め、あらゆる価値観が根底から覆された
現在の日本において、大人の男が取るべき行動、すなわち“男の流儀”を
伊集院が活字と映像で熱く語りかける。
本作品のエンディングに収録されている主題歌「ハガネのように 花のように」は
震災後の6月に発表された配信限定のチャリティ楽曲で、
大友が10数年来の親交がある伊集院と共に作詞した作品だ。
日本を代表する写真家・宮澤正明と気鋭のカメラマン・長屋和茂が
被災地で撮影した写真とともに、大友康平の熱い歌声に乗せて、
伊集院と大友が歌詞に込めたメッセージが響く――。?
【動画】プロローグ
【原稿】第一章 もし自分が被災したら
【原稿】第二章 私が被災地で目にしたもの
【原稿】第三章 東日本大震災と向き合う
【原稿】特別収録 弱い立場の者に手を差しのべよ
【動画】エピローグ
【動画】エンディング/主題歌:大友康平「ハガネのように 花のように」
この頃、若い人たちと話をしていると、彼等が、実はこれがよくわからない、というものがずいぶん多い。
友だちの親の葬式にいくら包めばいいかとか、墓参りは午前中に終えるもので午後三時以降は行くものではない、ということさえ知らない。
一見さんお断りの店、京都のお茶屋はどうやって入るのかとか、むこうも商売だから手順さえ踏めば大歓迎なのに……。
そんなことをもう少し詳しく書いた指南書を出して欲しいというので“男の流儀入門”をはじめたわけです。
まず最初を“震災編”にしたのは、大人の男がどうしたらいいかというのは避けられないテーマだったからです。どう生きのびるか、家族は、友人は、そして救助、救済はどうするか。直接の被災者でなくともどうこの震災をとらえておけばよいか。
あまり難しくならないようにと、音楽も今回の震災を勇気づけようとロック歌手の大友康平さんと一緒に作った曲を使いました。ぜひ歌とともに震災を考える機会の一冊にしてもらえれば幸いです。
2011年9月21日
伊集院 静
東日本大震災により、
生まれ故郷が、学生時代を過ごした街が、
大変な被害に見舞われました。
流れるニュース映像を見て、自分自身の無力さと
自然の脅威の前にただ呆然と立ちすくむだけでした。
伊集院さんとは、僕がファンで憧れていることを知る
映画プロデューサーの方と10数年前にお会いして以来
お付き合いをさせていただいておりましたが
震災直後、男として作家として尊敬してやまない伊集院さんが
仙台での震災の様子を綴った手記を雑誌で読み、
そうだ!今こそ歌を作らねばと強く思い、
すぐに伊集院さんに「歌を作りませんか!」と電話を入れました。
その日のうちに
「ハガネのように強い精神と
咲く花のような優しい心を持って
手をつなぎ合ってともに歩いて行こう」
という“散文詩”が送られてきて、ただ頑張れというのではなく
人の心に寄り添えるような曲が仕上がりました。
大切なのは、この出来事を風化させないことだと思います。
大友 康平
一九五〇年山口県生まれ。立教大学文学部卒。八一年短編小説『皐月』でデビュー。九一年『乳房』で第十二回吉川英治文学新人賞、九二年『受け月』で第百七回直木三十五賞、九四年『機関車先生』で第七回柴田錬三郎賞、〇二年『ごろごろ』で第三十六回吉川英治文学賞を受賞。主な著書に『海峡』三部作、『美の旅人』、『羊の目』、『お父やんとオジさん』、『いねむり先生』がある。
一九五六年宮城県生まれ。東北学院大学卒。在学中にロックバンド「HOUND DOG」を結成、八〇年にメジャーデビュー。代表曲に『ff(フォルテシモ)』、『ONLY LOVE』、『BRIDGE~あの橋をわたるとき~』などヒット曲多数。ソロ活動も行なっており、最新作は大友康平『コラボ×3』。近年では活動の幅を広げ、映画やドラマにも出演し、高い評価を得ている。
一九六〇年東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。処女作『夢十夜』でアメリカ写真界のアカデミー賞と称されるICP第一回新人賞を受賞。女優、ミュージシャンなどの写真集から広告、雑誌など幅広いメディアで活躍。近年では第六十二回伊勢神宮式年遷宮の奉納写真家として活動中。著書に『伊勢神宮―現代に生きる神話』などがある。